『一年越しの逆襲』
「ルーク、あなたの事が嫌いなんです」
そう言ったジェイドの眉間には盛大な皺が寄っている。
一目見ただけでも分かる。かなり無理をしてしる。
「あ、あの……ジェイド?」
「嫌いなんです、えぇ、そうなんです」
ルークの目を見るわけでもなく、ジェイドは体をルークに向けつつ地面を睨んでいる姿はなんとも痛々しい。
ルークはジェイドに歩み寄ると、唇を噛み締めたジェイドの頬に触れる。そしてびくりと震えたジェイドにルークは仕方ないなと笑った。
「無理しなくていいから、な?」
そうはいきませんとジェイドは首を横に振った。
「エイプリルフールを、敢行しなくてはいけないんです」
以前、ルークがジェイドに言ったエイプリルフールを利用した言葉は、どうやらジェイドの心に深い傷を残したらしく、数日前からジェイドはエイプリルフールを匂わせるような行動を取っていた。
そして今日も機会を伺っていたのか、微妙な間があったり、不自然な空気を作り出したりしていたが、ようやく今年のエイプリルフールを自分から振ってきた。
だが、変に勘違いしたジェイドのエイプリルフールはルークにバレバレであり、ここで騙されてあげるのが優しさかもしれないが、騙されたら騙されたでジェイドがどんな行動を取るか分からない。
ルークは深いため息をついた。
「俺もジェイドが嫌いだから」
その言葉にジェイドが目線を上げた。
そこには苦笑するルークが、ジェイドを見つめている。
「え?」
「だから、俺もジェイドが嫌いだよ」
笑っているルークがジェイドには天使に見えた。
「えぇ、えぇ」
世界一優しい嘘をつくルークは嫌いを繰り返した。胸の中で繰り返された言葉は違う意味を持つ言葉へと変換される。
言葉自体は普段言われたらどれほど傷つくだろうというものなのに、今日というこの日に言われると胸が温まる。
「でも矢張り、ちゃんと正しい言葉で言っても良いでしょうか?」
「それじゃ今日って意味が無いだろ」
「それでもいいんです。なんだか無性に今すぐあなたに伝えたくて」
ジェイドの頬を押さえていたルークの手を、一回り大きい手が包み込む。その言葉に照れたルークが手をひっこめようとすると強い力で抑えられた。
「ルーク」
「う、うん」
「愛しています」
END
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