『甘やかしたい日』
「あ、ほら。こぼしてます」
そう言ってルークの口の端についた食べカスを取るジェイドの頬は緩みっぱなしだ。
気色悪いと仲間一同の視線を浴びながらもジェイドはルークの世話焼きを止めない。
「も、いいよ。一人で食えるし!」
「いえいえ。いいじゃないですかっ。あ、デザートもありますからね〜」
そう、その食事は朝からルークの好むものばかりだった。
チキン、エビは必ず入る。
キノコやニンジンやミルクなどルークが苦手な食材はそれと分からないように仕込まれ、ジェイド手製のクリームパフェがラストを飾った。
食事に関して、いたれり尽くせり。
「うぅっ」
「はいっあーん」
ジェイドはクリームパフェを一匙掬うと、それをルークの口元へ運ぶ。
「あぐっ」
嫌々ながらもルークが口を開ければ、そのスプーンはルークの口の中へと侵入して甘いクリームを落とす。
ルークの口の端に付いてしまったクリームをジェイドの唇がかすめ取った。
「っ!」
「付いてましたので」
ペロリと舐めるジェイドの甘い微笑みを直視してしまったルークは顔を真っ赤に染めて、横を向く。
すると目に入るのは仲間の姿。
ティアはうっとりとこちらを眺め、アニスは口から大量のグラニュー糖を出し、ナタリアは頬をうっすらと染めながら「アッシュもいつの日にか」と粒やいている。ガイに至っては涙を流しながら、俺のルークが……とハンカチを噛んでいた。
「ほらルーク。もう一口いかがです?」
横を向いてしまったルークの口をジェイドが再びクリームをのせたスプーンでつついてくる。
「んっ、はぐっ……」
つい、癖で口が開いてスプーンを口に許す。
「いやー可愛いですね〜」
「お前、今日は何なんだよ!距離が近いぞ!」
「おや、そうですか?恋人同士ですからねっ甘い時間もしっかり堪能しないとっ!」
「時と場所を考えろー!」
シャドウガーデン・ウンディーネ・9の日。
ジェイドの手帳には花丸が付いていたという。