『やきもち』

「ほら、俺からのプレゼントだ。受け取ってくれるよな?」

何度目だろう。
アスランはため息をついた。
緊急の隠密指令があると会議の途中にピオニーに呼ばれたかと思うと、急ぎ私室に向かうと、そこには大きなバスケットに沢山の小袋を詰め込んでいる金髪碧眼のピオニーがいた。
恋人同士とは言え、勅命で呼ばれたのだと姿勢を正すと「お返しを手伝って欲しい」と言われ、何故か荷物持ちになっていた。

「嫌ですわ陛下。私、バレンタインに贈りものなどしておりませんもの」
「君は生きているだけでバレンタインの贈りものになるのさ」
「ふふふ。毎年毎年、お上手ですのね」

そう言って城のメイド一人一人にバスケットに入った小袋を渡し出したのだ。
ため息の一つ位、許して欲しい。

「陛下、今日の執務はいかがなさいました?」
「固い事言うなよアスラン。これも仕事だ」

そうウィンクする自分の恋人にアスランは一日かけてバレンタインのお返しだというホワイトデー作業を手伝わされたのだった。
とは言え、いくら仕事だからといっても自分が想っている男が他の女に甘い言葉とプレゼントを渡している姿はあまりに辛く、温厚なアスランでもイライラしてくる。

「素敵な思い出を有難う」
「あぁ一輪の薔薇のような笑顔だね」
「今宵、あなたの夢の中で続きを」

普段言われない、言わないような事ばかり言うピオニーに呆れも感じる。
それも女性は皆、その言葉をからかいつつも頬を赤く染めているのだ。一部の女性はピオニーの頬にキスまでしていた。
ようやく最後の一つを配り終わった時はアスランは何も言わずにバスケットをピオニーの私室に置いて立ち去る位に気分は沈んでいた。

「わっ!ちょ、アスラン!」

それを慌ててピオニーがアスランの腕を掴んで引き留める。

「お疲れ様でした、陛下。今日の所は失礼させて頂きます」
「アスラン」

ピオニーの顔を見ずに最低限の言葉のみで去ろうとするアスランの唇を不意打ちのようにピオニーの唇がかすめとった。

「んっ」 「まだ、仕事は終わりじゃない」

ペロリとアスランの唇を舐め、瞳を覗き込むと、アスランは目をそらした。

「聞いておりません。勅命はお返しを手伝って欲しいとの事でした」
「まだ、一人分残ってる」

固い姿勢のままでいるアスランをピオニーは自分から抱き締めた。
そしてその耳元で囁く。

「傍にいてくれて、有難う」
「……!」

じわりと耳の奥に広がる言葉。
様々な女性に愛を囁いた同じ唇で、甘い声を。

「やめて下さい!」
「アスラン?」
「なんですか、同じような言葉で!私は、私は……!」
「アスラン」
「今日一日、どんな気持ちでお仕えしたと思っているのですか!」
「アスラン」

ピオニーが何度もアスランの名前を呼んだ。
その表情は優しく、温かく、どこか仕方無いと崩れている。

「嫉妬、したか?」

ピオニーの言葉が胸に刺さった。
嫉妬。なんて醜い言葉だろう。
なのに当の本人は嬉しそうに笑うのだ。

「アスランも嫉妬するんだな」
「嫉妬などしません!」
「ムキになるなって。美人が台無しだ」
「陛下!お戯れはお止め下さい!」
「戯れなんかじゃない」

ピオニーの腕にこもる力が強くなる。
愛を囁く言葉さえも深く。

「感謝の気持ちだ。この世で一番感謝を返したいのはアスラン。お前だ」

その素直に開かない唇にピオニーの唇は静かに重なった。
衣服を脱がす手前も面倒でピオニーは唇を重ね深く絡ませると、急性にアスランのベルトを外す。
本人の気性を表したような複雑なベルトも手順を踏めば簡単に外れて、緩めるのは容易い。
そして、その気になっていないアスランを手で探り当てると刺激を与えた。

「や、止めて下さい!気分ではありません!」
「俺からの感謝の気持ちだって言ってるだろ」
「こんなのっ……うっあぁ」

巧みな愛撫を受けて反応しない程、未開発な身体ではない。
ピオニーの刺激には従順に反応するように身体は躾を受けていた。
少しずつ大きくなるソコをピオニーは服の下に手を入れて直接に触る。

「服の上からも分かる位、勃ってるの分かるか?」
「あっあんっ」

下半身から漏れるくちゅくちゅと粘着執な音がアスランを耳から犯した。

「はぁっ、もぉっ、陛下、離して下さい」
「いいから、出せ」
「ひぁっ……!」

ピオニーの指が鈴口をぎゅっとなぞると、限界まで膨らんだアスランが弾けた。
部屋にアスランの荒い息だけが響く。

「沢山だしたな」

下着の中から手を出すと、その濡れた指を普通に舐めるピオニーにアスランは慌てて止めに入った。

「陛下!汚いですから!」
「アスランのは甘いんだぞ」

見当違いも甚だしい。
しかしその濡れた指を舐めるピオニーにアスランの下半身がうずくのを隠せない。
その指で、熱いもので、満たして欲しい。
言葉よりも確かな愛が欲しい。
先ほどの抵抗を受け取ってかピオニーはそれっきりアスランに触れてこようとしない。
恥ずかしいけれども。アスランは勇気を振り絞る。

「へ、陛下」
「ん?」
「あっはん!」

突然アスランの言った言葉にピオニーは目を丸くした。
これしか思いつかないとアスランはもう一声を付け足す。

「う、うっふん」

そうすると意図が伝わったのかピオニーは男臭い笑みを浮かべた。

「感謝の気持ち、受け取ってくれるのか?」
「来年は勅命であれお手伝いしませんからね」
「という事は?」
「お返しは私一人だけにして下さい」

それならば受け取ります。
真っ赤になったアスランにピオニーは満足そうにキスを落とした。



END











ピオフリでしたー
あまねつんとのコラボでした!!