『お風呂』


「今日も…疲れましたねぇ」

のろのろと家路に着く足が重たい。
疲弊していた。
死霊使いと呼ばれていようとも、所詮は人間であり、モンスターでも超人でも何でもない。激務があれば疲れるし、鍛えていても限界はくる。
抱えてる資料さえも重たく感じて、足を引きずるようにして、やっとの思いで自宅に着くと、赤毛の子どもがピョコンと出迎えた。

「お帰りっジェイド!今日も遅かったな」

最近の忙しさを知ってかルークは自分からジェイドの手にある資料の入ったカバンを取り上げて、ジェイドのブーツを脱がしにかかる。
足上げてーという言葉に億劫になりながらもノロノロと従ってブーツを脱いだ。
そしてルークに手を引かれるままに脱衣所に連れて行かれると、ルークがいそいそとジェイドの軍服を脱がせ、下着は自分で脱いでと告げるとルークは足元をまくって浴室に入ってしまう。
とりあえず、何にも考えたくないと思っていたジェイドはルークに言われたまま下着を取り、眼鏡を外すと浴室に入った。

「ジェイド、ここ座って」

ルークは少し低めの椅子を指指してシャワーを出しながら待っていた。

「……どうかしたんですか?」
「いーから!座る!」

なにやら、至れり尽くせりなルークの様子に疑問を覚えて、やっとの思いで声を出すとルークがニコリと笑ってジェイドの腕を引いた。
ジェイドがやれやれと腰をかけると、ルークは「いくぞー」と丁度良い温かいシャワーをジェイドにかけた。
何だか身体中がゆるんでいく感じがしてジェイドはうっとりと瞳を閉じる。 全身が濡れるとルークはワッシャワッシャと泡を立ててジェイドの髪を洗い始めた。
ルークの指が気持ち良い。

「かゆい所、無いか?」
「えぇ。気持ち良いです」

ふーっとジェイドの口からため息が漏れた。
ルークの手によって髪が洗われ、泡を流されると、よく泡立ったスポンジで腕から背中まで優しくこすられた。
さすがに前の胸やら腹の下は洗わずに黙ってルークはジェイドにスポンジを渡したが。
最後にルークがシャワーでジェイドの全身を流すと、倦怠感もやや減少していた。

「じゃ、湯船入って、温まったら出てこいな」

ジェイドを洗っている時に多少濡れたのかルークは服を脱いで新しいものに着替えながら言った。

「夕飯の準備、してるから。ご飯食べて、ゆっくり休もう」
「ルーク」
「ん?」

ジェイドの呼びかけにルークがニコリと笑った。
何やらジーンと胸の奥に染み入るのがあるのは、年をとったせいか、それとも疲れが溜まりすぎたのか。

「有難うございます」
「……今日もお疲れ様、ジェイド」



END







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