『一緒に……』
血が流れ出る。
温かい血がどろりと生き物のように体から抜け出る。まるで今まで閉じ込められていたかのように、必死に少しでも遠くに出ようとして、止まる事を知らず流れる。
「気分はどうですか?」
眼鏡の奥に赤い瞳を持つ男が、寝台に横たわるルークに話しかける。
「んーなんか…まだどうとも感じないな。熱いのが流れてる感じ」
ルークはなんとも気軽に返事を返す。その手首にはチューブが繋がっていてチューブの先には実験で使われる様な流し台。そこから下水管に赤い血が流れていた。
「静脈に繋ぎましたからね。しばらくかかるかと思います」
もっとも10分そこらですけど。
眼鏡が苦笑した。
「ジェイドは?ジェイドはどんな感じ?」
ジェイドと呼ばれた眼鏡の男は自分の手首を見つめた。
ルークと同じように手首にはチューブが刺さっていて、チューブの先は同じ流し。そして下水管。
「ちょっと、寒いですね」
ルークが横たわっている寝台の下で背を向けて座っているジェイドがルークの方を見上げる。
「……このままじゃ顔も見れないじゃん、こっちこいよ」
ルークが手招きした。
ジェイドが立ち上がって、寝台に腰掛ける。
「これで良いですか?」
軽い立ちくらみを覚えて眉間に手を当てる。
思った以上に血が出ているらしい。
「……お前からは俺が見えるんだろうけど…俺からお前が見えない」
むすっとしたルークの表情に笑みをこぼしがらジェイドはルークが体をずらして空けてくれたルークの隣に体を倒す。
「これで良いですか?」
「うん」
ルークがジェイドにすり寄る。
お互いのチューブがすれた。
血は止まらないで流れていく。
「寒くないですか?」
ジェイドがルークを抱きしめる。
「平気。お前いると温かいから」
かすかに震え始めたルークの体。
しかし意識は大分ぼんやりとしてきたのか、その表情は笑っている。
「大丈夫ですよ、私も一緒ですから」
同じように大分霞みがかった思考を動かして、ルークの背をさする。
「うん、うん」
返事を返すのさえ面倒になったのかルークの唇から言葉が止まる。
「一緒に逝きましょうね」
最後の言葉をルークに送った。
「うん」
最後の言葉がルークから返ってきた。
そして静寂が広がった。