『愛用品』


風に向きによっては香る。普段は近くに寄らないと気付かない、ジェイドの香水の香り。
ルークはその香りが好きで、ジェイドに「良い香りだな」と良く言っていた。
そうしたら彼は「ルークは香水に興味がある」と捉えたようで。
グランコクマに寄った時に、プレゼントとして香水を貰った。
見た目は赤い、サラサラした液体。可愛らしい小瓶にタプンと入っていて、貰ってから一度も身につけた事がなかった。

「ジェイドー風呂上がったから、次いいよ」

シャワールームから頭を乱暴に拭きながら出る。

「有難うございます」

そろそろ出ると予測していたのかジェイドは立ち上がると準備していた着替えなどを持ってスタスタとルークを入れ違いにシャワールームに入っていく。
ルークはタオルをベッドの上にパサっと置くと、自分の荷物の中から例の香水を出す。
蓋を開けて匂いをかぐ。
甘いけれどもさっぱりした香り。柑橘系の様な香りだった。
それとなく女性陣に聞いた話、手首やうなじなどに軽く付けるのがいいらしい。
意を決して小瓶を斜めに傾ける。
すると液体は少しずつしか出てこない。
液体の出入り口が小さいのだ。
ちょっとイライラして何回も液体を手に垂らす。
それから髪の短くなって見えやすくなった、うなじなどに乱暴に塗る。
周囲にムっとする位の香りがただようが、ルークは気づかない。
小瓶の蓋をキュッと閉めて、荷物の中に放り込む。
ちょっといたずらをした後の子供も気持ちだった。
気付くかな?気付いてくれるかな?そういう期待と緊張で胸が高鳴る。
するとジェイドがシャワールームから出てきた。
少し恥ずかしくて顔を背けたからルークは分からなかったが、扉を開けた瞬間、ジェイドが眉をひそめた。

「ルーク、あなた私がプレゼントした香水を使いましたか?」

びくっとルークの体が震える。
やれやれとジェイドがルークに歩み寄る。

「香水というのは沢山使えばいいものでもないのですよ?」
「な、ななななんだよ!」

何で香水を使ってるのかばれたのか、と焦っているのが目に見えて分かる。
ジェイドが呆れつつもルークを抱きしめた。

「微量でも体温が高ければ、その分香りは発揮されます。ルーク、あなたは風呂上りでしょう?」

ルークがフルフルと震え始めた。
どうやら間違った事をしたのかと怯え始めたらしい。

「使い方を知らなかったのは、誤算でした。私でよければ教えますよ」

だから、ね?
と、あやすようにルークの顔を覗き込む。

「怒ってませんよ、ルーク。この香り、あなたに良く合ってます」

今日はいじめないで可愛い失敗を楽しもうかと、ジェイドが笑う。

「今晩はあなたの香りに包まれて眠りましょうか」

いつもとは逆ですね。
ルークが真っ赤な顔を上げるとジェイドのキスがおりてきた。



END







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