『プレゼント』
「はい。プレゼントですよ」
そう言って差し出されたのは良いものの、少し迷う。受け取っていいのだろうか。
いや。
受け取りたいのは山々だけれども、周囲の視線があるし何より彼は仕事に行っていたのだからどうして手土産があるのかとか、受け取ると何か大事なものを失いそうな葛藤がすさまじい。
「どうしました? あなたに似合うと思ったんですけど……不服そうですね」
「いや、なんつーか。気持ちだけ受け取りたいんだけど……」
そう言うと、彼はにっこり笑った。
そしてずぃっと差し出される。
困る。
正直、受け取ったら最後、これを付けないと彼は満足しないだろう。
「ルーク。嫌なら嫌って言って下さい。嫌ですか?」
「つーか喜ぶ人間の方が絶対少ないって」
「嫌なのですね?」
その瞬間、ジェイドの表情が曇った。そして差し出していたプレゼントをルークの前から降ろす。
そして道を開けるように、ルークの正面から体をどけた。
「分かりました。こちらで処分しておきますので、もう行っていいですよ」
「あぁ」
眼鏡が光って表情が見えないが、すごく残念そうに見えた。
傷ついたようにも見える。やっぱり受け取ったほうが良かったのだろうか。
しかし、プライドというか。
人間として、とっくに卒業した段階を振り返られても困る。まして、ルーク自身はそれを利用した事もない。
なんというか嫌悪感。困る。
「残念ですねぇ、これで今日は幼児プレイが楽しめると思ったのですが……」
ジェイド・カーティスはそう言って手の中にあるおしゃぶりを転がした。
後日。
使われたとか。
END
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