『二人だけの空間』
パラパラと本をめくる規則正しい音。
サラサラと紙の上を走るペンの音。
それが不意に同時に止まった。
「…なんだよ」
「なんですか?」
同時に口を開いたかと思えば同じ内容のもので。ルークの頬が染まって、ジェイドはにこりと笑う。
「おっお前が急にペン止めるから気になっただけだ!」
「おや、奇遇ですね。私も急に本を閉じたあなたが気になった所です」
部屋の窓についている机で作業していたジェイドがベッドの縁に座って本を読んでいたルークの脇へと移動した。
ついでにむすっとして頬を赤らめているルークにもたれかかる。
「なんだよ。重てぇっつーの」
言葉ではそう言うものの、決して嫌がっていないルークの肩に顔をうずめると心地良い高めの体温が布越しに伝わってくる。
「子供はあったかいですねー」
ぐいぐいと顔をすりよせるとくすぐったいよ、と根負けしたのかルークが破顔してジェイドの頭を撫で始めた。
なんだか、心地良い空間。
「子ども扱いすんなっつーの」
口を尖らせて、でも目は笑っていて。
あぁ、どうしてこんなにこの子供が愛しいのだろう。
「では、こちらでいかがでしょうか?」
摺り寄せていた顔を離して、尖らせている唇に軽く触れる。一度触れて離れれば尖っていた唇が、うっすらと開いて誘っている様な仕草を見せる。
だから、もう一度深く重ねてやると二人でベッドに倒れ込んだ。少し上に乗るような状態になればルークの腕が背中に回されて。
「今日は随分甘えん坊ですね」
からかう様に言えば。
「お前だってタイミング計ってただろ」
裏を返された。
お互いにギュッと抱きしめると、それだけで満たされた気持ちになった。
なんというか。
「幸せですね」
「幸せだな」