『眼鏡の言い分』


眼鏡が似合うな…と見つめていたら突然キスをされた。

「な、何するんだよ!」

慌てて距離をとろうとすると、逆に腰を抱かれて引き寄せられてしまう。
ジェイド独特の口の端を上げた人を小馬鹿にするような笑みがジェイドの顔全体に浮かんでいる。

「いえ、キスして欲しそうな顔をしていたので」

つい……と言葉の端に付け足す彼が一番キスがしたかったのではないだろうか…?
ルークが胡散臭そうな表情でジェイドを見つめているとジェイドが頬を摺り寄せてきた。
鼻と鼻を摺り寄せて戯れる。

「ちょ…なに…」

ルークの反応が面白いのかジェイドがクスクス笑う。

「これ、かけてさしあげますよ」

片手で自分の眼鏡を外すとルークにかけてやる。
ルークの視界がレンズ越しになる。

「うわっ」
「うっとおしいんですよ、眼鏡って」

ルークの思考を見通したような台詞。
正にルークは「何だか気持ち悪い!」と言いそうになっていたのだが……。

「ジェイド、くすぐったいって!」

手でルークの頬やら何やらを撫でているとルークから苦情が飛ぶ。
眼鏡をかけたルークも新鮮だったが何だか背伸びをしている印象が拭えない。

「ルーク」

眼鏡を外した目でルークをじっと見つめると、キャンキャン騒いでいたルークが頬を染めて止まる。
女性陣おすみつきのジェイドの素顔。
ルークにも効果があったらしい。
硬直したルークから眼鏡を外してポケットに入れる。
そしてそっとルークの唇に自分の唇を重ねた。

「愛しい相手をレンズ越しで見つめる程、無粋な事はしませんよ」



END







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