『初キス』
「ルーク、キスしましょうか」
お互いの気持ちを確かめ合ってから一度もキスをした事は無かった。
頬や手に触れ合う程度のキスならば沢山したものの、唇を重ねてのものは一度も無い。別に、しようか、という雰囲気が全く無かったのではない。ジェイドがルークを見つめて、ルークも何か言いたそうにジェイドを見つめて…とそういう感じになった事だってあった。ただ全てルークが避けて曖昧になってしまっているのだが。
だからルークの体がビクリと反応した時、今回も諦めるべきかと思った。
しかしどうしてか、ルークは頬を赤く染めたままその場で硬直してしまっている。
ルークがこちらをちらりと見てくるので、とっておきの柔らかい笑みを浮かべてやると、バツの悪そうに小さく「っち」と言った。彼なりの抵抗なのかもしれないが、それさえも愛しく感じる。
「ほら、そんな所突っ立ってないで。こっちへいらっしゃい」
と、ポンポンと自分の膝の上を叩く。ベッドのふちに座っていたのが良かったのか自分の膝の上以外に座ると心地が悪い。ほぼ、指定席である。
無言で見つめ続けてやると、ルークは「うぅ…」と唸りながらもゆっくりとジェイドに近付き、指定席に腰を下ろす。
我が儘で傲慢である彼が自分にだけ順応な態度を示す事にほんの僅かな優越感を覚える。
まぁこちらとしても彼の我が儘に目をつぶったり甘やかしたりする瞬間があるので惚れた弱みはお互い様ではあるが。
少し緊張してるのか座ったまま固まってしまったルークの背に腕を回し抱きしめてやると、ルークも応えるように腕を回してくれた。そのまま胸に顔をうずめられてしまったが。
「顔、真っ赤ですよ」
「うっうるせー!」
照れ隠しなのか精一杯の虚勢なのか。
回された腕の力が強くなる。その可愛らしい反応にいたずら心がうずく。
いつもは長い髪で覆われている彼の耳を、鼻先で探り当てて摺り寄せる。しかし彼はそれで気付かないらしい。
そっと唇で耳の輪郭を辿ると、彼はくすぐったいと感じたのかちょっと首をひねるばかり。
だから舌先で耳をなぞってやった。
「っつぅあぁ!?」
色気の無い声で、でも顔はそのゾクリとした痺れに素直に反応して目が潤んでいた。
「なっ何するんだよ!」
ルークがしがみ付くように回していた腕をほどいて顔を上げた瞬間。
そっと唇を重ねた。