『しずかな世界』
机の上には赤い石。
本当は透明に透けているものが良かったが、あの跡地であの場所の足元に落ちていた石はどれも彼の意思を含んでいるようでとりわけ一番大きいものを選んで胸ポケットに潜ませていた。
以来、なにかあると胸に手をあててしまう。
胸の中で、彼はまだ笑っていてくれている。彼はまだ、生きている。
「こういうのを哀愁というのでしょうかねぇ」
事務机でそうぼやいてしまう。どうにも、集中できない。
「ねぇ、ルーク」
石を撫でる。
くすぐったそうに笑う彼をイメージして、静かに目を閉じた。
あなたのいない世界は
とても静かです。